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1 職場不倫をした従業員を解雇できるか?
中国の日系企業からは相談を受けたことがありませんが、日本の企業ではたまにこのような相談を受けます。
職場不倫をした従業員を解雇した事例で解雇有効と判断した裁判例をご紹介致します。不倫相手の刑事事件の嫌疑を会社に報告しなかったという事情もありますが、解雇有効と判断するとは驚きました。
ちなみに日本では職場不倫のみでは原則として解雇ができません。
2 事例
康は、2006年1月1日に儋州にある銀行に入社して働き、雇用契約を締結しました。
2019年5月7日、会社は、康が同僚の白が公安局に拘束された事件を隠蔽し、康と白の間に不適切な不倫関係があったことを理由に、康との雇用契約を解除しました。
会社就業規則の第295条では、「職場で誠実信頼性の原則に違反し、虚偽、隠蔽、偽装があり、深刻な悪影響と結果を引き起こした場合、雇用契約を解除する」と規定し、第307条では、解雇事由として「他人との不適切な性的関係があり、悪影響を引き起こした場合」と規定しています。
康は労働仲裁を申請し、労働仲裁委員会は、会社が康に317,552.64元の違法解除の補償金を支払うことを決定しました。
会社はこの仲裁結果に満足せず、裁判所に訴えました。
3 裁判所の判断
一審・二審判決:解雇有効
・白は会社の従業員であり、犯罪の疑いがある場合、それが職務上の犯罪であるか非職務上の犯罪であるかに関わらず、会社に一定の悪影響と結果をもたらす。康は白に犯罪の疑いがあることを知っていたが、白に犯罪の疑いがある勾留事件を会社に隠し、会社に悪影響をもたらした。この行為は、就業規則第295条の「職場で誠実信頼性の原則に違反し、虚偽、隠蔽、偽装があり、深刻な悪影響と結果を引き起こした場合、雇用契約を解除する」に違反している。
・また、康は、この行為は個人の私生活であり、恋愛の自由、結婚の自由に属するものだと弁明したが、 裁判所は、個人の私生活は社会の秩序や道徳に反しないことを前提に確立されるべきであり、康の行動は家族の基本的な道徳規範に反し、深刻な悪影響を及ぼし、また職場にも悪影響を及ぼすであろう。第307条の「他人との不適切な性的関係があり、悪影響を引き起こした場合」に該当する。
*二審判決は一審判決と基本的に同じですが、白が中国共産党員であることからより厳しくモラルが問われるという内容を追加していました。
4 実務上の留意点
ほとんどの日系企業の就業規則には不倫に関する記載はありませんので、不倫発覚即解雇は難しいと思いますが、公私混同がひどい場合は別の規則違反を探して処罰する、退職勧奨を行うしかないと思われます。
案号:(2020)琼02民终14*4号(当事者仮名)