中国進出の日系企業に向けて、人事・労務など幅広いコンサルティングを行います。
どんな企業にとっても、従業員の入退社を処理することがあります。中国の労働関連法律では、従業員が自らの申請で離職する場合、離職日の30日前(試用期間の場合、離職日の3日前)に、会社に通知しなければならないと定めています。ただし、一部従業員は事前に会社に通知せず、出勤しなくなったり、通知した翌日に会社に来なくなったりなど、法定の通知義務を履行せず、勝手に退職することがあります。特に製造現場では多発しています。そこ結果、業務が穏便に引き継ぐことができず、部門全体の生産に支障を与えてしまいます。
従業員の勝手な離職を防ぐためには、一部会社は就業規則で「従業員が事前通知義務を履行せず離職する場合、事前通知不足日数1日に対し、1日の給与を控除する。」と規定することがあります。果たして、この処理方法はリスクがないでしょうか。
実は、労働契約や就業規則に、上記旨を明確に約束しても、実際会社が給与を控除すると、ほとんどの仲裁や裁判で敗訴し、控除した給与金額の返済を要求されます。中国労働関連法律が制定される当初、会社がいろんな理由をつけて、従業員の給与を恣意に控除し、従業員の生活が保障できない背景があったため、法律では従業員が労働して獲得した給与を、強く保護する傾向があります。例えば、勝手に離職した従業員の給与を控除する案件で、裁判所は以下の意見を示しました。
「労働者は離職する際に、法律で定められるプロセスに沿って、離職の30日前に会社に通知し、会社に新しい人材の採用やポジションの調整する期間を与え、経営生産活動に影響してはいけない。ただし、労働報酬は労働者が実際の労働を提供し、獲得した最も基本的な生活手段であり、生存するために必要なものである。従業員の行為が損害をもたらしたと証明できず、従業員の給与を控除することは、会社の優位的な地位を乱用し、法律や契約の解釈ミスであり、裁判所は支持しない。」
従業員の勝手な離職を防ぐためには、以下の方法を検討し、準備することが考えられます。
1. 中国労働契約法では、「従業員は労働契約を違法解除する際、会社に損害を与える場合、損害弁償責任を負わなければならない。」と定めている。このため、会社が実際受けた損害を証明できれば、弁償を要求することが考えられる。ただし、会社側が実際の損害の立証責任を負うため、実運用では、なかなか簡単ではない。特に、一部会社が労働契約に「従業員が法定プロセスを経ず、勝手に離職する場合、〇万元の違約金を支払わなければならない。」と固定の違約金を約束することがあるが、実際の裁判例では、支持されないことがほとんどである。
2. 急に出勤しなくなる従業員に対し、就業規則で定める無断欠勤で処分し、懲戒解雇することができる。契約解除の理由は、自己申請による退職から、懲戒解雇になるため、次の会社の入職に影響することがある。
3. 従業員の勝手な離職行為を徹底的に制限することが困難のため、やはり入社する際に、過去勤務経歴や面接態度、背景調査などの手法を通じて、本人を見極める必要がある。