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1 病気休暇の手続きを踏まない従業員
中国の病気休暇には悩ましい論点がいくつかあります。
その中で就業規則に定められた手続きを踏まずに勝手に病気休暇と称して休む場合に解雇が可能であるかとの論点があります。
会社に有利な裁判例がありましたのでご紹介致します。
2 事案
陸謙は2003年3月にある会社に入社した。
2016年12月3日、陸謙は肺炎のため会社に1週間病気休暇を申請し、会社は、これを承認した。
病気休暇期間が満了した後、陸謙は、2016年12月10日から2016年12月18日まで休暇手続きをせず出勤しなかった。会社は就業規則の規定に基づいて、労働契約を解除した。
2017年3月8日、陸謙は労働仲裁委員会に仲裁申請を提出し、出勤していない間にうつ病になり休みが必要であったとして、会社の解雇は違法であり、会社に違法解除の賠償金を支払うことを求めた。
2017年4月21日、仲裁委員会は会社に賠償金を支払うことを裁決した。
会社はこれを不服として訴訟を起こした。
3 裁判所の判断
(1)一審:会社敗訴
一審裁判所の審理期間中、陸謙は2016年12月11日に病院に受診した記録と病院から発行されたうつ病診断書を提供した。
一審裁判所は、陸謙は9日間連続して出勤せず、適時に休暇申請をしなかったが、病気のために休む必要があり、無断欠勤とみなすべきではない。会社は陸謙が欠勤したことを理由に陸謙と労働契約を解除したことは違法であると判断し、違法解除の賠償金を支払うことを求めた。
(2)二審:会社勝訴
陸謙は病気休暇を取る手続きを履行しておらず、会社が労働契約を解除しても違法ではない。
就業規則には
「従業員が病気休暇を取るには必ず指定病院が発行した診断書と記録を持って、本人が従業員休暇審査表を記入し、許可を得てから休暇を取ることができる」
「従業員が正当な理由なく3日間以上無断欠勤した場合解雇することができる」
との定めがある。
本件では、陸謙は2016年12月3日に肺炎のため会社に1週間休暇を取って2016年12月9日まで、会社が承認した。
2016年12月10日に病気休暇が満了した後も、職場に出勤せずに休暇手続きを履行しなかった。
そのため、3日以上無断欠勤をしたことを理由に解雇をすることができると判断し、二審は一審判決を取り消し、陸謙の請求を認めなかった。
4 実務上の留意点
病気休暇の手続きを踏まない従業員は、他にも会社ともめ事を起こしている場合が多く、できれば会社としては退職して欲しいと思うことも多々あります。
今回の裁判例のように裁判所によって判断はまちまちですが、手続きを踏まないことを理由に解雇が有効となることもあります。就業規則に病気休暇の手続きを詳細に定めてルール化することは重要です。一度御社の就業規則の病気休暇の手続をご確認いただければと思います。
事件番号:(2018)遼01民終2155号(当事者仮名)