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蘭璽メルマガ25年2月号:【雇い止め通知を忘れて2倍の経済補償金が発生した事例】
皆様
こんにちは!
上海迈伊兹兰玺人材咨询有限公司の向井蘭です。このレターは、弊社の谷、向井、龚がこれまでに名刺交換させていただきました皆様にお送りしています。
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1. 契約更新を放置した後に退職扱いにした場合のリスク
期間雇用契約の更新手続きを失念することや、雇い止めの意向がありながら契約期間の満了時または契約書に定められた通知期限までに適切な対応を取らないケースは起こり得ます。このような場合、会社が一方的に雇用契約を終了した場合に、法定の1倍の経済補償金で済むのかどうかが争点となり、本件ではこの点が裁判で争われました。
2. 事案の概要
熊大は2016年8月28日に居吉公司(以下、「会社」)へ入社し、2016年11月1日から2017年11月1日までの期間で雇用契約を締結しました。
契約満了後も熊大は勤務を継続しましたが、書面による契約更新は行われませんでした。その後、2017年11月21日、会社は熊大の勤務成績が経済的損失を招いたことを理由に雇用関係を解消し、これにより労働紛争が発生しました。
熊大は、違法解雇による賠償金45,117元(14,891元/月×1.5ヶ月×2)の支払いを求めて労働仲裁を申し立て、仲裁委員会は会社に対し経済補償金27,153.5元の支払いを命じました。双方はこの裁定に不服を申し立て、裁判に進みました。
3. 裁判所の判断
第一審&第二審
第一審および第二審では、雇用契約は2017年11月1日に失効したものの、会社が熊大を引き続き雇用していたと判断されました。2017年11月21日に会社が雇用関係の終了を通告したことについては、中華人民共和国労働契約法第44条第6項の「法律、行政法規が定めるその他の状況」に該当するとされ、会社は経済補償金21,076.5元(14,051元/月×1.5ヶ月)の支払いを命じられました。
熊大はこの判断に納得せず、湖南省高等法院に再審を申し立てました。
再審
高裁は、契約が明確に解除されず労働が継続していた場合、事実上の労働関係が成立していると判断しました。会社が労働契約を一方的に解消したことは違法であり、経済補償金の2倍に相当する44,673元(14,891元/月×1.5ヶ月×2)の支払いが必要とされました。
法的根拠
最高人民法院の「労働紛争事件の裁判における法律適用に関する解釈(一)」第16条では、「労働契約の満了後も労働者が元の使用者のために働き、使用者が異議を述べない場合、労働契約は元の条件で継続される」と定められています。また、労働部の関連通達(労働部発[1996]第354号、労働部発[1997]第106号)では、契約満了前に1ヶ月前通知を行い、適時に手続きを実施する義務が使用者にあるとされています。
本件では、会社が雇用契約満了後も熊大の労働を受け入れ、契約終了手続きを講じなかったことから、事実上の雇用関係が継続していたと認定されました。適時に新たな雇用契約を締結せず、また雇用契約を終了する正当な理由も証明できなかったため、会社の行為は違法解雇と判断されました。
4. 実務上の留意点
本件のように、雇い止めの通知を怠り、後になって退職扱いとすることは、違法解雇と判断されるリスクを伴います。本来であれば法定の1倍の経済補償金で済むところ、違法解雇と認定されると2倍の補償金を支払う必要が生じるため、注意が必要です。人事担当者がうっかり忘れる可能性もありますので、総経理がチェックするのは非現実的ではあるものの、何らかの形でダブルチェックをして、雇い止め通知を忘れないようにする必要があります。
事件番号:(2019)湘民再682号
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