中国進出の日系企業に向けて、人事・労務など幅広いコンサルティングを行います。
【人事の仕事シリーズ30】AI時代に向かう人事改革
皆様こんにちは。上海迈伊兹兰玺人材咨询有限公司の谷公爾です。上海で経営コンサルタントをしております。このレターは、弊社の谷、向井、龚がこれまでに名刺交換させていただきました皆様にお送りしています。毎月、中国における人事や労務の話題をお送りしておりますが、もし配信不要の場合、下記のアドレスへご連絡ください。
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またバックナンバーは、弊社HP(http://myts-hr.com/column.html)にございますので、よろしければ是非ご確認ください。
近年、AI技術の急速な進化により、企業の業務環境が大きく変化しています。ChatGPTやGemini、DeepSeek、Qwenといった高度なAIが次々と登場し、ビジネスの現場に実装され始めています。特に、中国市場ではデジタル技術の進展が早く、AIの活用は競争力を維持するための重要な要素となっています。
また日本本社でのAI導入が進み始めたことから中国現地法人でもAIを使うように、という指示が来ているという話も良く聞くようになってきました。しかし、中国ではChatGPTやGeminiへのアクセスが制限されていること、情報三法の縛りなどのために本社のシステムは使用しにくく、また本社のIT部門も中国の事情に必ずしも詳しくないことから、どうしたら良いかとの相談をいただくことが増えてきました。
実は既に、日系大手ベンダーの何社かから、中国国内のサーバーを利用したAIプラットフォームが提供されるようになっています。企業ユースに特化し、情報セキュリティの観点からも安心できるため、是非ご利用をお勧めしたいと思っています。
マイツ蘭璽社では、このようなAIプラットフォームを提供する企業と協力し、クライアント企業のAI活用支援も開始しました。導入コンサルティングから、実際の活用トレーニング、業務改善支援や、人事や管理領域に限定しないAIを使った新サービス開発提案まで、一貫したサポートを提供しています。
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例えば営業活動の現場にAIが導入されるとどうなるかを見てみましょう。
1.リード管理
過去の商談履歴や、メール開封率、対象企業のニュースリリース等から、「ホットリード」リストを作成。どの企業に優先的に接触すべきかを提示させることが可能になる。
2.アポ取りメール、フォローメールの自動作成
リード管理AIによって提示された企業、担当者に対し、営業マン(マネジャー)の指定によってアポ取りメールを自動作成。メールには前回接触時の状況を盛り込み、パーソナライズした内容にできる。
訪問後には、面談のお礼、商談のポイント確認などを盛り込み、かつ次ステップに繋ぐための依頼など、過去の成功事例に基づく対応を含めた内容のフォローメールを作成する。
3.営業日報の自動作成・最適化と次ステップの提示
商談時の音声メモから議事録作成、要約を経て、自社の標準営業ステップのどの段階にあるかをAIが判断。DBへの登録を自動で行ったうえ、次のアクションとして最適なものを提案してもらう。訪問後、営業マンとの対話AIによって、営業マンの感覚的な情報などを取り込むことも可能。
4.プレゼン資料の自動作成
営業日報から企業の現状を読み取り、提案したい内容を指示すると、過去の他社提案資料や必要な技術資料を参照しつつ、最適なプレゼン資料を作成。見積書、契約書の作成も。
上記は営業マンのサポートとなる部分ですが、営業マネジャーとしての活用も有効です。
5.営業トークスクリプトの最適化
過去の商談における音声メモ、その成否を蓄積し学習させることによって、どのようなスクリプトや資料の成約確率が高いかを判断。これを営業社員の研修教材として利用できる。
6.業務タスクの自動割り当て
部門内メンバーのスキル、現有タスクの進捗状況を入力し、タスク割り当てを自動で実施。
パフォーマンス分析と改善提案も可能。
7.目標設定と進捗管理
会社の目標、昨年の目標とその達成状況、部下のスキルと意欲を入力し、チームおよび個人の目標を提案してもらう。SMARTに適合していることを確認、修正のうえ、合意・確定した目標に対し、進捗管理と定期的なアラーム発信を自動化。またマネジメント上では、予測モデルを活用し、目標達成の確率やその改善対応の提示なども。
営業バックオフィスでは下記のようなことが考えられます。
8.AI営業チャットボットの導入
顧客の問い合わせに対し、過去の会話ログや既存FAQなどを参照して、音声対応。営業担当者への引き継ぎによって案件化を支援する。
9.定期報告書のデータ集計とフォーマット整形
自動でExcelシートにデータをまとめ、報告書を生成。
如何ですか?うまく活用できれば営業マンの稼働率が大幅に向上し、業績改善につなげていけるのではないかいうイメージが涌いてきませんか?かつ中国人営業マンが中国語ベースで活動した全ての履歴を、中国語でも日本語でも確認できるという環境も作れます。
しかし、残念なことに日本企業の風土として、なかなか新しいことに取り組むことができなかったり、せっかく会社としてAIを導入しても現場のキーマンが使ってくれなかったりというようなことが起こってしまうと成果が出にくくなってしまいます。
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そこで人事部として、AI導入に先だって、あるいは同時に、下記のような対策を講じておかれるようお勧めしたいと思います。
技能トレーニングの強化:
従業員向けにAI活用スキルを学べる研修を提供し、いち早くAI利用、活用できる技能を獲得してもらう。従来の様々なIT系のシステム導入と異なり、正しく使えればたちまち実感できる成果(まず日報作成など「面倒な業務」の省力化)が出てくるため、成功体験を持たせやすい。
新たな評価項目、水準の設定と組織文化の変革:
業務プロセスのなかでAIに置き換えられていく部分が増えてくるため、プロセス評価から成果評価にシフトしていく必要がある。一気に行うと「成果だけ」のギスギス風土を生みかねないため、「うまくAIと協業していく」ことをKPI化し、段階的な変更が求められる。
また、これまで以上に自律的、自営的な働き方ができる人材が求められるようになり、これを重視した評価体系にもしていくことが必要。
AI利用規程の整備:
AIを企業が活用するうえでは、セキュリティを確保し、業務にどのAIを使うか、どのように使うか、また新しいアプリケーションを利用する際の登録、申請方法などの社内ルールを明確に定める必要がある。IT部門、事業部門と調整し、できるだけ早急に規程を整えることが肝要。
是非、他社に後れを取ることなく、AI活用によって業績拡大を是非実現いただきたいと思います。すぐに着手したい、という方も、もしまだ「AIと言われても良く分からないなあ」という感覚をお持ちの方も、是非マイツへお声がけください!
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【執筆者紹介】
谷公爾 Tani Koji 札幌生まれ、茨城・兵庫育ち
広島大学工学部システム工学科中退、神戸大学経済学部卒、上海在住、満58歳
2003年から中国ビジネスに関わり、とうとう滞在22年。戦略立案や営業強化などのコンサルティングを得意としてきましたが、せっかくの戦略が思った通りに遂行されない組織の問題に多く直面し、現在では人事組織強化のご支援が全クライアントの半数を超えるようになってきました。組織が変わり、業績が上がり、人材が元気になる。そんな企業作りをお手伝いしたいと思っています。
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