中国進出の日系企業に向けて、人事・労務など幅広いコンサルティングを行います。
中国では、「ウェーシン」などの携帯アプリケーションは、単なるソーシャルメディアソフトだけでなく、生活インフラの一貫になってきました。多くの会社が「ウェーシングループ」を組織し、会社情報の通知や日常業務管理の手段として活用しています。従業員の間でもグループを作り、会社やプライベートの情報を共有しています。ただし、グループの全参加者が自由で情報を書き込み、一瞬で全従業員に伝達してしまうため、会社に不利を与えてしまうケースも多発しています。
ソーシャルメディアソフトはかなり新しいもので、会社や従業員が「ウェーシングループ」などにおける各種行動について、明確な規定が存在しません。トラブルが発生しても、あくまでも現行労働関連法規の考え方に従い、仲裁や裁判所が判断しています。例えば、以下のトラブルがよく発生しています。
1. 勤務時間後、上司が「ウェーシングループ」で業務を要求したら、残業に見做されますか?
勤務時間後に、上司が業務報告やデータ提供を求めるため、グループなどで部下に連絡することがよくあります。従業員のその作業時間に対し、残業代を支給する必要があるでしょうか。判例から見ると、上司の業務命令に従う作業のため、残業時間と見做すと判断されます。
ただし、日系企業では、上司がすぐに作業を要求するのではなく、翌日でもいいが、情報提供を連絡することが多いです。ほとんどの場合、従業員がすぐ情報を提供し、残業も申請しないが、「勤務時間後でも、サービス残業をする」と不快な気分になる可能性があります。このため、勤務時間後の業務連絡について、会社が基本的な考え方を全従業員に示す必要があります。
2. 従業員が「仕事を辞める」との書き込みがあったら、離職申請として、扱う必要がありますか?
ほとんどの会社は就業規則で「従業員が離職する場合、書面の申請を提出する」と規定しています。このため、グループで書き込みがあっても、無効と判断される意見が多いです。その場合、会社側から書面の申請の提出を要求したり、離職申請確認書を発行したり、迅速に従業員の離職意志を確認したほうがいいです。
一部日系企業では、会社の重要な規程や通知を、グループを通じて配布しています。「ウェーシングループ」で配信される会社情報が有効かどうか、意見が分かれています。その効力を保障するためには、会社規程で「会社情報の伝達方法は書面、メール、ウェーシングループを含む」ことを定めたり、従業員が情報を確認した証明を残るなど、証拠集めが必要になります。
3. 従業員が「ウェーシングループ」で会社の悪口を話したら、懲戒処分できますか?
従業員が会社や同僚に対する文句や悪口を書き込むことがよくあります。合理的な訴求ではなく、単に不満を言い、会社における信頼関係や人間関係を損害するため、直ちに処理しなければなりません。ただし、懲戒処分を与えると、違法リスクがかなり高いです。真実ではないことを書き込むと、処分してもいいが、文句や悪口レベルで、会社に大きな損害を与えていなければ、懲戒処分することが違法だとの裁判意見があります。
一部の会社は、「総経理が入っているグループのほか、従業員の間にグループを作ってはいけない」と規定していますが、これ自体が不合理で、会社の雰囲気を悪くすると考えられます。会社グループはあくまでも業務を連絡するもので、従業員の相談窓口を別途設置するほうが、効果的だと思われます。
以上のように、ソーシャルメディアソフトの特徴から、「軽く話した内容」で、トラブルになったことが多いです。各種経営活動の効力を保障し、従業員が安心して勤務する会社環境を作るために、これらの新しい状況を想定し、管理規程として、従業員と明確に約束しておいたほうが望ましいと考えられます。