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蘭璽メルマガ23年7月号:【人事の仕事シリーズ26】エンゲージメント向上のための人事部門の仕事4
【人事の仕事シリーズ26】エンゲージメント向上のための人事部門の仕事4
皆様こんにちは。上海迈伊兹兰玺人材咨询有限公司の谷公爾です。上海で経営コンサルタントをしております。このレターは、弊社の谷、向井、龚がこれまでに名刺交換させていただきました皆様にお送りしています。毎月、中国における人事や労務の話題をお送りしておりますが、もし配信不要の場合、下記のアドレスへご連絡ください。
またバックナンバーは、弊社HP(http://myts-hr.com/column.html)にございますので、ご確認ください。
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今回の「エンゲージメント向上のための人事部門の仕事4」は、Stage3.の「価値観を合わせる」になります。【人事の仕事シリーズ23】で、「エンゲージメントを高めるための人事部門の仕事」として、下記のStageに沿って進める必要がありますという話を致しました。
Stage1.社員が健全、健康である状態を作る
Stage2.社内コミュニケーションを活性化する
Stage3.価値観を合わせる
Stage3.は最終段階であり、マズロー的に言えば、生存欲求、安全欲求、所属欲求、承認欲求のいずれかが満たされたのち、自己実現欲求が強く出てくることを期待すべきですので、Stage1.Stage2.が一定程度完了していないなかで価値観の話をあまり大上段に振りかざすと、空回りします。
とはいえ、前段が完全に完了していなければ、価値観合わせができないかと言えば、そういうわけでもありません。会社(人事)がStage1.Stage2.について、何かしら施策を打っていれば、社員ごとにその受け止め方も、施策の浸透度も違ってきますから、「先に進める人のために」価値観についての施策も順次考えていくことは無駄にはなりません。
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さて、ここからは下記の順番で話を進めてまいります。
①「価値観」とは何か?
②エンゲージメントを高めるために「価値観」はなぜ重要なのか?
③如何にして組織の「価値観」を合わせていくか?
まず①の「価値観」とは何か?ですが、簡単に定義するならば「組織の関係者が、物事を判断し、行動するにあたって、重要視する概念や、基準」のことです。価値観に賛同でき、これに従った活動ができるのであれば、給料は減っても構わないと考えるプロフェッショナルが、実に70%にものぼるという調査結果もあります。
この価値観を合わせていく作業が非常に難しいのは、「経営理念」とか、「社是」とか「コアバリュー」とか綺麗に文章化されたものをいくら作っても、「本当のところはどうなの?」というところが問われてしまうからです。社長室に掲げられた額縁内の言葉とは、まったく異なる価値観が浸透してしまっているという組織が実は非常に多くございます。
また、中国の日系法人では、日本本社の経営理念をそのまま持ってきて、中国語に直訳して社員に唱和させているような企業も多いようです。たまたまうまくマッチしていればいいのですが、残念ながらとてもそうは言えないものがほとんどで、特にグローバル展開されているような大企業ほど、中国人社員にとっては「まったく身近に感じられない、自分事として捉えられない」ものになっていたりします。
経営理念は文字通り「経営」のあり方を示す考え方ですので、各法人の置かれた環境や戦略によって変わりますし、ましてや日本の会社が何故わざわざ中国でビジネスをするのか、というような視点を鑑みると、本社と同じ理念などということは、普通はないはずなのです。
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さて、上で「本当のところ」という言い方を致しました。謳い文句は美しくても、実際には、社員の誰も信じていない経営理念では困ります。
最近の日本の会社の例ですが、ちょうど世の中を騒がせているBM社などは、「お金が大事、ノルマが大事、創業一族が偉い」という価値観が徹底されていたのだろうと思います。社員たちがこれに心から賛同していたかどうかは分かりませんが、少なくとも従ってはいました。その結果がアレですね。
また芸能事務所のJなどは、「デビューが大事、売れれば正義、創業者は神」だったのかなと察します。ちょっと前まで一緒に夢を見ていた仲間のヤメJを芸能界から徹底排除するというようなことを、いとも簡単に容認できてしまうのは、価値観としてこれを正しいと思っていなければ難しいはずです。
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上記例は極端なケースですし、各社とも、経理理念に「ノルマ第一」などと掲げているわけではありません。しかし、私どももクライアント企業と一緒に、「自社の経営理念」を策定するというような作業を行っていて、美麗な文言に警戒してしまうことはしばしばあります。
中でももっとも怪しいものが、「顧客第一主義」ですよね。そもそも顧客を第一とする前提だと、「顧客に損失を与えるくらいなら、自社は潰れてもいい」という覚悟が要ります。そのようなことはあり得ないですし、この言葉を掲げる会社の多くが実際は「自社利益第一主義」になっているという笑えない状況もあるなと感じてもいます。では、「第一」になることは何、誰なのでしょうか?ここを徹底して突き詰めることが、理念やバリューを設定するときの最重要ポイントになります。
筆者の前職コンサル会社では、クライアント社長のご子息や、次世代幹部たちに提供する「後継経営者向け講座」の中で、受講者に「私は私とともに生きる人のために生きよう」という何ともベタなセリフを伝えていました。実は私はこの言葉にかなり感銘を受け、だから今でも覚えているのですが、これは、私とともに生きてくれない人とは付き合わないという宣言になっているのですね。
お客様の利益のために、などとざっくりと、かつ空々しいことを言うのではなく、「私や自社に共鳴、協力してくれる」ステークホルダーしか要らない、という意味になっています。逆に、私とともに生きてくれるなら、私はその人のために命を使うという決意でもあり、相手を選ぶけれど、選んだ相手とは徹底して付き合っていこう、という心意気が見えます。
理念や価値観は、美しい言葉である必要はなく、一般的に好ましいとされるポジティブワードである必要もなく、経営者やその会社の社員が本心から信じられるものであるべきでしょう。
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さて、文章化された「理念、バリュー」を仮にVisibleValueと呼んでおきます。一方、文章化されていないけれど、組織に浸透している価値観を、Invisible Valueとします。
上記のBM社の経理理念(VisibleValue)はこのようなものでした。
1. 常にお客様のニーズにあったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供する
2. 目標利益を確保して会社を存続発展させる
3. 社員の生活安定向上を図る
特に1.が正直言って、意味不明というか、空虚ですよね。「常に」「お客様のニーズ」「クオリティ」等々の言葉も、正確に何を指しているのかが分かりません。
こういう、分からない言葉で価値観を表現してしまうと、社員は分かるところを先に覚えます。つまり2.目標利益(ノルマ必達)、3.生活安定(給与増)です。理解がしやすい2.3.を先に覚えると、1.のお客様は「車に詳しくなく、ネットで情報を得られない高齢者」になり、お客様のニーズは、「保険でカバーできるなら高くても良いので、全部やってもらえること」、クオリティは「一見してバレないレベル」と解釈されていったのでしょう。
セオリー的には、この経営理念は「顧客の満足」「会社の発展」「社員の生活」という3要素がきちんと盛り込まれていますので、もしかするとどこかのコンサル会社の指導などで、とりあえず形だけ策定されたのかもしれません。
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次回は、文章化されない価値観、行動規範(Invisible Value)がどう形成されていき、それがエンゲージメントに如何に影響するのか、また健全な価値観が形成され、組織に浸透していくために、人事はどのような施策を打つ必要があるのかについて述べていきたいと思います。
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【執筆者紹介】
谷公爾 Tani Koji 札幌生まれ、茨城?兵庫育ち
広島大学工学部システム工学科中退、神戸大学経済学部卒、上海在住、満57歳
2003年から中国ビジネスに関わり、20年が経ってしまいました。戦略立案や営業強化などのコンサルティングを得意としてきましたが、せっかくの戦略が思った通りに遂行されない組織の問題に多く直面し、現在では人事組織強化のご支援が全クライアントの半数を超えるようになってきました。組織が変わり、業績が上がり、人材が元気になる。そんな企業作りをお手伝いしたいと思っています。
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