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【人事の仕事シリーズ25】エンゲージメント向上のための人事部門の仕事3
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エンゲージメント向上のための人事部門の仕事3は、Stage2.の「社内コミュニケーションを活性化する」になります。よろしければ、【人事の仕事シリーズ23】【人事の仕事シリーズ24】も是非あわせてお読みください。
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「エンゲージメントを高めるための人事部門の仕事」として、下記のStageに沿って進める必要がありますという話を【人事の仕事シリーズ23】で致しました。
Stage1.社員が健全、健康である状態を作る
Stage2.社内コミュニケーションを活性化する
Stage3.価値観を合わせる
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さて、エンゲージメントの構成要素は、達成感、連帯感、公平感の3つであると言われ、このどれもがコミュニケーションと密接な関係にあります。
達成感:達成感が得られるときというのは、過去の実績を超えたと感じられる成果を出せたときです。これは個人で実現することももちろん可能ですが、同僚や上司、他部門などが持っている経営資源やノウハウに助けられて実現することのほうが多いでしょう。その中で自分が一定以上の貢献ができた、と信じられることが必要です。
連帯感:必ずしも仕事で助けてもらえるかどうかだけでなく、「仲間が付いていてくれる」という実感が重要です。連帯の対義語は孤立ですから、見て貰えている、寄り添ってもらえているという感覚を持てるようにすることは、特にテレワークなどが普及しつつある現状では、相当意識的に行っていくことが求められます。
公平感:「自己評価と実際の評価にズレが生じる認知バイアス(ダニング・クルーガー効果)」は、ほとんどどのような組織にでも見られます。能力が低い人は自分を過大評価し、能力が高い人は自分を過少評価する傾向となるため、適切なフィードバックがない組織では特に大きなバイアスがかかり、自分は正当に評価されていないという不満が溜まりやすくなります。
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上記、達成感、連帯感、公平感を社員に持ってもらうためには、1on1のような上司と部下の間の多頻度かつフランクなコミュニケーションが効果的であることが実証されています。本稿をお読みいただいている皆さまの会社でも、既に制度として1on1を導入、運用されていらっしゃるところが多いのではないでしょうか。
ここで人事として押さえておかなければならない重要な視点が、「コミュニケーションには、縦横斜めの3方向がある」ということです。
1on1は縦のコミュニケーションであり、これ自体はもちろん重要です。しかし、エンゲージメントを強化するためにはこれだけでは不完全です。現場のマネジャーには、1on1を上手に行えない、例えば職人肌のようなタイプの方もいますし、上司がいくら密なコミュニケーションを取っていても、同じ立場の同僚たちが何を考えているのかが分かっていないと、孤立感を生んでしまいます。
【斜めのコミュニケーション】
上司の能力不足や相性の良し悪しは残念ながら不可避であると考えられます。これを補完するためには、「上司たち」が直属部下であるかないかに関わらず、気にかけてくれているという状況を作り、それを「是」とする文化が必須です。これは中国の階層主義、序列主義と対立することがあり、「直属上司を通さずに他チームのメンバーに声をかける」という行為自体を嫌うようなマネジャーが組織内で多数を占めるような状況では、うまく機能しないことになってしまいます。
従って、社員が「直属上司以外の上席者や先輩と交流できる場」を、人事部門主導で設定してあげる必要があります。また「我々は組織で事業を行っているのだから、個々の上司が完全であることを期待するのではなく、部下育成に他のマネジャーの支援を受けることは推奨される」という価値観を作り、浸透させていくことも求められます。
【横のコミュニケーション】
同期や同僚との繋がりというものは、ある程度勝手に産まれてくるものだと思われていることが多いようです。特に一定以上の組織規模になれば、業務内容は違えど、似たような立場で働く社員がおりますので、そこに人間関係が築かれていくのは当然のことでしょう。
ただここで人事部門が意識しておくべきは、「勝手に築かれていく関係が良好なものであるとは限らない」という点です。「良好」とは、
・お互いの能力や人格をリスペクトし合えている
・ツラいときに寄り添ってくれる
・互いに刺激しあってより高い成長、成果を目指すことができる
・同僚の成功を心から喜ぶことができる
などを指します。
これらが簡単ではないことは、企業人事に携わっている方なら経験があると思います。身も蓋もない言い方をしてしまうなら、「人間とはそういうもの」でもあり、だからこそ、エンゲージメントの高い組織を作るためには、人事部門こそが注意深く社内の人間関係を観察し、必要に応じて介入し、良好な人間関係を率先して作ってくれる社員を鼓舞しつつ、支援する必要があります。
「社員間のコミュニケーションが取れていない」というシグナルに気づくことは難しくありません。難しいのはシグナルが小さいうちに確認する習慣化です。風土の良くない会社では、問題が大きくなってから「なんでこんなことになるまで放置したのか」というような犯人探しをしたり、「相性が合わないなら辞めてもらえ」というような乱暴な解決策に頼ったりします。
逆に人間関係が良好で、よい風土の会社では、社員ひとりひとりが入社した直後から、縦横斜めの全方向でのコミュニケーションが築かれていく状況を人事部門が把握しています。そのための定期的な聞き取りを行い、会社の目指す方向や目的を何度も思い出してもらう機会を作り、社内の他の誰よりも、社員たちとのコミュニケーションに時間を使います。
万が一、コミュニケーションを活性化する使命を持った人事部員の社内コミュニケーションが、ライン部門より少ないというようなことになっているとすれば、これは悪い冗談としか言えません。
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エンゲージメントの高い組織では、人事部員のエンゲージメントこそが最も高い状態にあることが「当然」であり、もし皆さまの会社で「エンゲージメント強化」に取り組まれるのでしたら、まずここから着手されることをお勧めいたします。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――【執筆者紹介】
谷公爾 Tani Koji 札幌生まれ、茨城・兵庫育ち
広島大学工学部システム工学科中退、神戸大学経済学部卒、上海在住、満56歳
2003年から中国ビジネスに関わり、20年が経ってしまいました。戦略立案や営業強化などのコンサルティングを得意としてきましたが、せっかくの戦略が思った通りに遂行されない組織の問題に多く直面し、現在では人事組織強化のご支援が全クライアントの半数を超えるようになってきました。組織が変わり、業績が上がり、人材が元気になる。そんな企業作りをお手伝いしたいと思っています。
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