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【労働組合は解雇に拒否権を有するのか?】
2022.10.8 発行 9月号~
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皆様
こんにちは!
上海迈伊兹兰玺人材咨询有限公司の向井です。このレターは、弊社の谷、向井、龚がこれまでに名刺交換させていただきました皆様にお送りしています。毎月、中国における人事や労務の話題をお送りしております。
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労働組合は解雇に拒否権を有するのか?
1 解雇前の労働組合への通知
中国労働法では解雇する前に労働組合に通知をしなければならないと定めています。大体の場合、形式的に労働組合に通知して終わりなのですが、私は「仮に労働組合が解雇に反対したらどうなるのだろう」と疑問に思っていました。
今回は、労働組合が解雇に反対した場合であっても解雇が有効となった事例をご紹介します。
2 事例
江蘇省の会社に勤める王は、2009年10月26日にA社に入社しました。
2016年10月26日、A社は掲示板に「より良いオフィス環境を整え、より良い発展と競争力の強化を図るため、2016年10月29日、30日(今週の土日)に慈恵路○○号連創ビルにオフィスの移転を決定しました」という内容の移転案内を掲載しました。
ところが、王は、通知されたとおりに新オフィスに出勤しませんでした。
2016年11月2日、A社は「王に対する出勤督促状」を発行し、その主な内容は、「A社は様々な手段であなたに新住所への移転(南京市×××ビル××への移転)を知らせ、2016年10月31日に新オフィスへの出勤を明示的に要請したが、あなたはそれを無視してA社の要請に応じようとしませんでした。 あなたは、この通知を受け取ってから3日以内に新オフィスに出勤してください。そうでない場合は欠勤とみなし、社員手帳第5章社員評価の規定および労働契約法第39条第2項の規定に基づき、A社はあなたとの労働関係を法的に終了させることになりますので、ここに通知します。」というものでした。
それでも王は、通知された新しいオフィスには出勤しませんでした。
2016年11月7日、会社は再度「出勤督促通知書」を発行し、「通知を受け取ってから3日以内に新しい事務所の住所に出勤してください、さもなければ社員手帳第5章社員評価の規定に基づき、あなたの2度目の重大な過失を認定します」と最後に通告しました。
王は、また新しい住所に出勤しませんでした。
会社は以下の通知文を王に送りました。
「2016年11月15日、A社は、あなたが2016年10月31日から2016年11月7日まで連続6日間、2016年11月8日から2016年11月15日まで連続6日間欠勤し、従業員ハンドブック第5章第3条(2)を含むA社規則の規定によれば、あなたの上記行為はいずれも重大な過失によるものであり、あまたはこの通知を受け取ってから2日以内に新住所に出勤するよう最終的に通告します。 あなたがそれに従わない場合、会社は規則に従って関連する決定を下すことになります。」
同日、A社はA社の労働組合に対し、王がA社の規則に著しく違反し、雇用関係を解消する意向であること、労働組合は2日以内にA社に意見を提出するよう通知しました。
2016年11月17日、労働組合は会社に対し、総務部長が社員を弾圧しており、会社が言う「連続欠勤という重大な過失」は存在しないと回答し、王と協議するよう提案しました。
A社は、2016年11月21日、王がA社の重大な規則違反および連続欠勤という怠慢な行為を行ったことを理由に、王との雇用関係の終了を決定しました。
3 一審・二審判決
裁判所は、独立した法人格を持つ有限責任会社は、会社の正常な経営のために新しいオフィスを選択することを決定することができる。
企業の従業員の労働権益を保護するために、労働関係の調整に参加し、企業の従業員の労働権益に有害な行為を監督し是正することは企業の労働組合の義務であるが、企業の労働組合は企業の経営権の行使に対して拒否権を有しない。
本件の実際の状況から、王は、オフィスについて明確に合意することなく会社と雇用契約を締結し、会社は営業所の住所を南京市集匯路××号連創ビルに移転し、住所は南京市の管轄内にあり、移転先にはバス路線があること、会社は王の給与水準と労働条件を下げることなく、侮辱的、懲罰的な異動でもなかったことから、会社が王の職場を変更したことは、会社の経営自主権の正当な行使であり、労働法に言う労働契約の変更には当たらない。
王は会社の決定に従わず、会社からの度重なる督促にもかかわらず新しい事務所での勤務を拒否した。 したがって、王が2016年10月31日から11月15日まで会社が指定した事務所で勤務しなかったことは、長期欠勤に該当し、重大な服務規律違反に当たるため、会社は雇用契約を解除することができる。
4 実務上の留意点
この判決は、当たり前といえば当たり前ですが、労働組合に解雇の拒否権は無いことを明確にしました。
なお、会社内に労働組合が無くとも地域の労働組合に通知する必要があり、この通知を怠ると解雇は無効になるのでご注意ください。
案号:(2017)苏01民终10882号(当事者仮名)
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