中国進出の日系企業に向けて、人事・労務など幅広いコンサルティングを行います。
皆様
こんにちは!
3月下旬から、上海はコロナ・ロックダウン状態になり、すでに2カ月ほど経ちました。封鎖解除の予定などは発表されていますが、本当にどうなるかは見通せない状態が続いています。正常な営業活動、生産活動が行われないため、各会社に多大なダメージを与えています。その中で、従業員の給与の支払方法や法律で定めるテレワークの定義等、悩まれている会社が少なくありません。
パンデミックが始まってから、欧米や日本等において、多くの会社がテレワークを導入しました。業務実施の効率化や家賃の節約等、一定の成果が見られてもいます。中国では、今回のことで、貿易系やサービス系を中心に、強制的かつ試験的にテレワークを導入している会社が多いです。新しい業務形態で、法律も十分整備されていないため、運用する段階でさまざまな課題は残されていますが、長期化するコロナ対策の中、現時点からでも、準備しておいたほうが望ましいと考えられます。そしてテレワークを導入する際、以下のことに注意する必要があります。
1. テレワーク規程、或いはテレワーク協議書の締結
中国の労働関連法律法規には、テレワークの概念がないため、多くの管理手法は既存法規定から派生されたものです。やり方によっては従業員の理解や法律の支持を得られないものが考えられます。テレワーク実施中の労使双方の権利義務、管理方法等を明確にし、トラブルを事前に予防するために、テレワーク規程の設定、或いはテレワーク協議書の締結を推薦します。
ただし、テレワークは新しい業務形態なので、予測できない状況の発生が懸念されます。超大手企業のグーグルなどでも、テレワークの中止で、従業員とのトラブルが起きています。将来の不測事態に対応するため、上記規程や協議書を作成する際は、1年間などの期間を限定したり、「経営の判断によりテレワークを中止することがある。」と記載しておく等、留保条件を設けることをお勧めしています。
2. 業務設備や業務環境の準備
もちろん、従業員はPCがなければ、仕事ができません。テレワークを運用する会社では、ほとんどのケースで、会社がノートPCを貸与しています。デスクトップが主流となっている会社では、ノートPCの準備がかなりの出費になります。従業員個人のPCを利用して、テレワークを実施する会社もありますが、PCスペックが不十分であったり、秘密情報漏洩等のリスクヘッジができないなどの理由で、日系企業では、個人PCの利用は進んでいません。
また、業務を実施する際に、VPN接続や専用ソフトなどの利用など、特殊な業務環境が必要になることもあります。専用ソフトアカウントの準備や、遠隔操作の手配など、事前準備が必要です。同時に、見えないところで業務を実施しているため、従業員による秘密情報漏洩のリスクが高まるため、テレワーク制度を導入すると同時に、「秘密保持協議」を一緒に締結する会社も多くあります。
3. 業務時間の管理
テレワークの最も困難の部分は、日常業務管理の方法だと考えられます。ある中華系企業は従業員の日常業務管理のため、勤務期間中は必ずカメラ前で仕事するようにと要求し、従業員や社会から大きなバッシングを受けています。
確かに中国の職場では、業務報告が徹底されていないため、成果だけで管理する不安が残されています。このため、各業務を実施する時間帯を日報に記入させたり、1業務を終了するたびにグループチャットで上司同僚への報告を要求したりなど、各会社は業務の特徴に応じて、管理方法を設計しています。DINGDING等の勤怠管理APPを活用することも有効だと考えられます。
4. 労災対応と勤務地管理
ノートPCを持っていれば、どこでも仕事ができます。ただし、中国の法律では、勤務場所または通勤途中に発生した傷害は労災と認定され、会社の負担や責任が加重されます。会社のリスクを少しでも抑えるため、事前に登録した場所のみを勤務地に限定することが考えられます。
また、具体的な勤務地管理方法として、DINGDING等の勤怠管理APPのGPS打刻機能を活用し、自宅以外の場所から打刻した従業員に対し、上司による承認が必要と規定することもできます。
5. テレワーク手当の設定
テレワークを行う会社では、従業員が業務のために支出した水道電気代、ネット代などを補助する目的で、テレワーク手当を設けることがあります。日系企業の多くは、通常時、交通代や昼食代等を補助しているので、テレワークになると、これらの費用が発生しません。このため、テレワーク期間中に、会社が通勤手当、昼食手当などの支給を行わない代わりに、これと同等金額のテレワーク手当を支給するケースが多いようです。
上記のように、テレワーク制度を導入する際、事前に発生可能な事態を可能な限り予測し、対応策について従業員と約定しておくことが望ましいと考えます。弊社ではテレワーク制度の導入を多数支援しておりますので、ご質問やご要望がありましたら、ぜひ気軽に相談してみてください。
さらに、テレワーク環境においては、新人教育の実施方法、従業員モチベーション管理等、様々なその他の課題が発生してきます。日々変化する環境に対応するため、組織風土の改善、業務実施方法の調整、従業員業務習慣への考慮等も重要になってきます。積極的な社内コミュニケーションを通じて、これらの課題を解決し、会社の運営管理レベルが一層高められるようにしていきましょう。