中国進出の日系企業に向けて、人事・労務など幅広いコンサルティングを行います。
皆様ご存じの通り、現在、上海では都市封鎖に近い、ほぼ全域に及ぶ封鎖隔離措置が採られています。当グループの社員も全員が在宅勤務で、最低限の人員さえ、出社することができずに、管理系の業務などに支障を来し始めています。
マイツでは、2020年のコロナ発生直後に、全社テレワーク体制を整え、出社ができなくなっても、業務が回せるようにと制度変更やシステム導入を行ってきました。それでも会社に行かなければ発票が発行できないなどの問題が表面化しました。さすがに誰一人出社できない事態がここまでの期間続くとは想定していなかったことを反省しなくてはならないなあ、と考えております。
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さて、こうした状況下で、人事にできることは何でしょうか?
給与の遅配などが発生しないよう、通常業務を在宅ででもきっちりと処理していただくことは当然として、やはりどうしても対応いただきたいことが、社員の皆様のメンタルケアでしょう。
各エリアとも、3月半ば頃から散発的にマンション封鎖などが始まりました。各社、封鎖された社員が誰で、あるいは陽性になって隔離対象となった社員が誰か、などを捕捉、管理しておられることと思います。それ自体は必要なことですし、情報収集のために、メールや電話などで社員との接点も維持されてはいるでしょう。とはいえ、一般の社員の気持ちになってみれば、会社に対する報告はしなくてはいけないけれど、それだけでは「寂しい」と感じるかもしれません。
個人のストレス耐性にはかなりの差がありますから、大丈夫な人もいるであろう一方で、様々な理由から、ぎりぎりの精神状態になっている社員もいるかもしれません。
私どものクライアントでも、
・結婚生活史上、最悪の夫婦仲になった
・食料の確保を巡って、両親と大げんか
・一人暮らしのため、何日も誰とも話をしておらず煮詰まりつつある
など、単に生活物資が入手できる、できないというような物質的な問題ではなく、メンタルに影響し始めている社員さんの話しをぽつぽつと聞くようになっています。
封鎖のレベルにより、玄関から外へ出てはいけない、というようなエリアでは、運動不足も懸念されます。
そのようなこと、それぞれ独立した大人なんだから、自分自身で処理、解決したらいいではないか、ということもできますが、結果、社員がメンタルを病み、封鎖解除後に離職、休職、あるいは鬱、等々の問題を発生させることになっては、経営として、人事として失格であろうと思います。
こういうキツいときこそ、社員同士が繋がり、愚痴でもいいので話しのできる機会を作り、特に状況が厳しい方がいれば、人事から個別に相談に乗ってあげる。人事社員だって封鎖されていますから、話しを聞いても何もしてはあげられません。ただ話しを聞いてあげるだけですが、それでも気持ちに寄り添うことができれば、最悪の事態になることは避けられる可能性が高まります。
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当社(マイツ蘭璽)で、Web飲み会でもやるか~!と言ってみたところ、お酒が切れてますと言われました。それならWebお茶会でもいいではないですか。
家族と同居していて、会社の人と仕事ではない話しを長々としていたら、却って不興を買う、という人もいるでしょう。それならごく短時間でもいいし、その分、頻繁に連絡してあげるなどの対応もできるはずです。
個人の置かれている状況、本人の特性、性格により、何が必要かは変わってきますので、一律の対応ではなく、一人ひとりに応じた方法を考える必要があります。そして社員全員がこの厳しい状況を乗り切れるように、今こそ、経営者と人事部が、求心力を発揮し、社員に寄り添うべき時であろうと思います。
うちの会社は「自分を」大切に思ってくれている、と社員一人ひとりが感じてくれ、キツいけれど、辛いけれど、動けるようになったらまた一緒に頑張ろうと、心から思って貰えるような対策を是非、していただきたいと願っています。
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【執筆者紹介】
谷公爾 Tani Koji 札幌生まれ、茨城育ち
広島大学工学部システム工学科中退、神戸大学経済学部卒、上海在住、満56歳
2003年から中国ビジネスに関わり、まもなく20年になろうとしています。戦略立案や営業強化などのコンサルティングを得意としてきましたが、せっかくの戦略が思った通りに遂行されない組織の問題に多く直面し、現在では人事組織強化のご支援が全クライアントの半数を超えるようになってきました。組織が変わり、業績が上がり、人材が元気になる。そんな企業作りをお手伝いしたいと思っています。