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蘭璽メルマガ21年10月号:【人事の仕事シリーズ19】何のために人事制度を作るのか
2021.10.28発行 10月号~
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今号は、「人事制度を作成する目的」についてです。
昨年8月、人事制度策定後支援の引き合いをいただいた企業様で、12月までに制度を
完成させ、来年1月から導入して欲しいと言われました。
私の回答は「形だけなら作って作れないことはありませんが、そのようなお仕事は
原則としてお断りしております」でした。人事制度の策定、導入は、最低でも3年間を
見ていただく必要があるからです。
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この会社には、それまで確たる評価制度がなく、幹部層の合議によって、
200名強の社員を、SABCDに分類していました。しかしなぜAなのか、なぜBなのかが、
「上司の主観」で決められているため、
給与への反映をこれでやるとフィードバックができないという状態で、
結果、ほぼ全社員一律での昇給が行われていました。成果を上げている人、
頑張ってくれる人とそうでない人に差を付けられる制度にしたいとは仰られるものの、
「成果とは何か?」「頑張るとはどういうことか?」も曖昧でした。
そのような状態から、例えば同業他社が使っているような制度を参考に、
というよりほとんど同じものを真似して導入すると一体何が起こるでしょうか?
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自社が人材にどうあって欲しいか、というメッセージはそこにはなく、
成果や行動様式、あるいはものごとにあたっての考え方など、
「自社として正しいと考えること」「身につけて欲しい技能」は、他社と同じです、
ということになります。
失礼ながら、それでは競合と差別化し、お客様に選んでいただける企業経営には
ならないでしょうし、社員は少しでも給料の高い会社があれば、
すぐに転職してしまいます。
日本企業は社員に長期勤務や愛社精神を求める傾向が強いと言われます。
求めるのはいいですが、それに応えうる会社としての姿勢がなければ、
白けるだけですね。
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というようなお話しを、もう少し丁寧に申し上げた結果、3年計画での制度整備の
ご支援をさせていただくことになったのですが、現在は2022年1月の制度本導入に向けた
最終調整を行っています。
経営層の皆様と何度もディスカッションを繰り返し、自社における「成果」は、
会社や上位組織の目標を実現するための自部門または所属員の貢献度を指し、
かつそれは3年ビジョンに基づく、中期目標に繋がっていなければならないとしました。
一般的な目標管理制度を相当アレンジした自社バージョンになりました。
他に、行動評価項目、能力評価項目、マネジメント評価項目など、
現場の声も取り入れつつ、自社の人材はどうあるべきなのかを喧々諤々議論し、
策定していきました。
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その上で、今年の上半期をテスト期間とし、制度の目玉の一つでもある成果評価を、
実際に実施していただいたのですが、ある程度予想はしていたものの、
結果は惨憺たるものでした。つまり、
・自部門の目標が正しく提示できない部門が続出した
・3年後のビジョンに基づく(というのが経営ポリシーからの要諦だったのですが)
というところが実感として理解できず、単年度完結の項目が大半を占めた
・上司(管理職)がその状態であるため、一般層に何を成果として求めるかも、
ばらつきが大きく、この結果を評価にダイレクトに反映させるのは不可能と思われた
という状態でした。
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ここで、単に「目標管理を給与査定の指標算出ツールとして用いる」という
手法の話として制度を作っていたのであれば、もっと簡単なやり方で計測できるように
変更しよう、ということで済みます。しかし、この企業様は、
・成果とは経営への貢献である
・経営は単年度で終わるものではない
という考え方を社員に浸透させたいとの思いを強くお持ちでしたので、
それを人事ポリシーにも盛り込みました。一般層はともかく、管理職が
「自部門が会社の経営にどう貢献するか」を言語化できないようでは困る、
2年後3年後にどのような姿を実現したいのかが描けないようでは困る、
という問題意識を強くお持ちいただいていました。
給与そのものへの反映は各種移行措置によってエラー補正を行えばよい、
それよりも上記「成果」がしっかりと見える体質へ変えていこう。
多少、時間が掛かってもそれをやれるようにすることが、制度導入の本来的な目的
(組織体質の強化)である、と結論づけていただきました。
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この会社が、組織体質をどのように変えていくことができるかは、
今後の取り組みに掛かっていますが、如何でしょうか。
人事制度は確かに「ツール」の一つでしかありません。
しかし、それは「給与、賞与を決めるためのツール」ではなく、
「経営陣が実現したい組織体質を明確にし、それを実現させるためのツール」である
ことをご理解いただければ、この会社のブレない思いと相まって、今後の革新、
飛躍に大いに期待が持てるのではないでしょうか。