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1 産休中に払いすぎた賃金を返還請求できない?
産休中に払いすぎた賃金の返還請求が認められなかった事例についてご紹介いたします。
実際は、会社と何らかのトラブルになり(おそらく復帰後すぐ退職したところに何らかのトラブルがあったと思います)、福利厚生として支払っていた産休期間中の賃金の返還請求を求めたものと思われます。
2 事例
2015年1月1日、傅小蘭は広西の某会社に入社した。労働関係が存続している間、会社は傅小蘭のために従業員生育保険に加入した。
傅小蘭は2015年10月2日に入院し出産した。傅小蘭の産休期間中、会社は傅小蘭の産休前賃金基準で産休賃金を支払った。
2015年12月3日、社会保険部門は審査後、会社に従業員の生育保険待遇10404.69元を支払い、そのうち生育医療費は3000元、出産手当は7404.69元(産休98日で計算)であった。
2016年1月11日、会社は銀行振込により10404.69元を生育保険料として傅小蘭銀行口座に支払った。
2016年4月18日、傅小蘭は会社を退職した。
退職後、会社は会社のスタッフがミスをして傅小蘭に出産手当を多く支払いすぎたと考え(産休期間中も会社が直接傅小蘭に通常の賃金も払っていたため)、傅小蘭に返還請求をしたが、傅小蘭はこれに応じないので、会社は傅小蘭に7404.69元と利息の返還を求めて裁判所に提訴した。
3 判決
一審判決:【会社勝訴】会社は誤って傅小蘭に7404.69元を支払い、傅小蘭は不当に利益を得たので、会社に返却しなければならない。
一審裁判所は、会社が提出した証拠により、会社は誤って2016年1月11日に傅小蘭7404.69元を支払ったものであり、傅小蘭の利得には合法的な根拠がなく、利得同額と利息を会社に返却しなければならない。
二審・再審の裁定:【会社敗訴】会社は給料と出産手当を自発的に給付し、出産女性従業員の身体回復と新生児の健康成長に貢献しており、公序の良俗に符合し、褒められるべき善良な行為である。
本件では、傅小蘭と会社の労働関係が存続している間、会社は傅小蘭に生育保険を納め、法に基づいて傅小蘭は産休期間の生育保険待遇を受けるべきであり、社会保険取扱機関は傅小蘭の出産手当を会社に支払った後、会社は傅小蘭に出産手当支払わなければならない。
既存の法律では使用者が女性従業員が出産手当を受けながら女性従業員に賃金を支払うことを禁止しているわけではない。
傅小蘭系は会社の自発的な給付に基づいて賃金と出産手当を取得し、会社はそれが過失に基づくものであることを証明する証拠がなく、会社の返還請求には法的理由はないと判断した。
4 実務上の留意点
福利厚生として法定以上の手当や賃金を支払っている場合は、支払ったものは戻ってこないと考えた方が良いと思います。これは日中問わず同じでまずお金が戻ってきたことはありません。この点はご注意ください。
案号:(2020)桂民再411号(当事者系仮名)