中国進出の日系企業に向けて、人事・労務など幅広いコンサルティングを行います。
8月に上海の人力資源と社会保険部分は、従業員の労災をテーマとして、全市範囲で大規模な宣伝活動を実施しました。安全生産の促進と同時に、会社側及び従業員側が「労災保険条例」に対する理解度を高めることが目的でした。宣伝イベントの中、最近関心が多く集められる判例が発表されました。以下、日系企業として、発生可能性がある判例を紹介させていただきます。
l 通勤途中で、コロナウィルスに感染されて場合
「労災保険条例」では、従業員が通勤途中で、「本人主要責任以外の理由で、交通事故に遭遇し、負傷した場合」、労災に認定すべきと定めている。このため、通勤途中で感染病にかかった場合、労災に認定されることがない。
また、勤務中にコロナウィルスに感染された場合、医療従事者が病人治療が理由でない限り、一般的に労災に認定されることがないとの見方が強い。
l 通勤途中で、洪水に流され、死亡した場合
最近、中国各地で豪雨や洪水など、自然災害が多発している。従業員が通勤途中で自然災害に遭遇し、負傷や死亡する場合、「労災保険条例」で定める通勤途中の交通事故に該当しないため、労災に認定されることがない。
l 顧客との会食後、交通事故に遭遇した場合
顧客との会食後、帰宅する際に交通事故に遭遇し、負傷した場合、「労災保険条例」で定める通勤途中の交通事項に該当するため、一般的に労災に認定される。ここの論点は顧客との会食は労働時間外で、勤務ではないと会社側が主張するが、裁判所の見方は、実際の生産活動だけではなく、食事会や出張途中など、会社の利益のために行われている活動はすべて勤務と見なしている。
l 顧客と食事会で大量飲酒し、死亡した場合
接待などで、顧客との食事会で大量飲酒し、帰宅した後に死亡した場合、労災に認定されるか、見解が分かれている。顧客との食事会での飲酒は、勤務のために行われるため、労災に認定すべきとの見解があるが、「労災保険条例」で、「飲酒、ドラグが起因の場合、労災に認定しない。」との規定があるため、現時点、労災認定されない見解が強い。
l 会社食堂で、魚の骨に刺された場合
会社の食堂で昼食をとり、魚の骨に刺され、従業員の応対がとらないため、負傷が拡大し、手術及び全治3か月に至ったケースがあった。裁判所では、労災認定基準である「勤務時間、勤務場所、勤務のため」に該当するため、労災に認定すべきと判断した。
l 社員旅行中に事故に遭遇した場合
会社が土日に組織する社員旅行に参加し、事故で負傷した場合、労災認定すべきかについて、見解が分かれている。法律では、「会社が組織する、または会社の指示で他の会社が組織する活動に参加し、事故で負傷した場合、労災に認定すべき。ただし、勤務と無関係の活動に参加する場合、その限りではない。」と定めている。本件の場合、社員旅行は土日を利用したため、勤務と無関係と判断し、労災を認定されなかった。ただし、平日に社員旅行や企業研修などを実施した場合、労災認定される可能性が高いと考えられる。
以上のように、労災認定の場面では、「勤務時間、勤務場所、勤務のため」の判断基準に該当すれば、基本的に認定されます。