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皆様、こんにちは。上海迈伊兹兰玺人材咨询有限公司の谷公爾です。
新年度が始まり、目標設定や評価設計を見直す機会も増える時期かと思います。前号では、AIを単なるツールではなく「有能な部下」として使いこなす考え方を整理しました。
今回はその続きとして、具体的な人事テーマの一つである「目標管理」に落とし込みます。
結論から言えば、目標設定のつまずきは“能力不足”ではなく、「適切な目標とは何か」が言語化されていないことに起因するケースが少なくありません。そして、その言語化を支援する相棒としてAIが非常にうまく機能します。
例えば、「売上を上げる」「顧客満足度を高める」といった“正しいけれど抽象的”な目標が出てきて、面談がそのまま抽象論の応酬になってしまう。あるいは逆に、やることリスト(タスク)になっていて、成果が測れない。こうした状態は、本人のやる気の問題というより、目標の作り方の作法が組織に浸透していないことが原因です。
1. なぜ「適切な目標設定ができない」のか
目標管理の面談でよく起きるのが、「目標を作って」と言われても何を書けばよいか分からない、という状態です。上司側も、何が足りないのかは感覚的に分かっていても、毎回ゼロから説明し、手直しするのは正直限界があります。
典型例を2つ挙げます。
· 例1:抽象度が高すぎる目標(例:『顧客満足度を向上させる』)→何をどこまでやれば達成なのか、本人も上司も合意しづらい
· 例2:タスクの羅列になっている目標(例:『毎週レポートを作成する』『会議を月2回開催する』)→やった/やらないは分かるが、成果や価値につながったかが見えない
こうしたズレを面談で修正しようとすると、上司は「もっと具体的に」「で、数字は?」「それって上位方針とどうつながるの?」と何度も問い直すことになります。もちろん指導は大切ですが、全員分を毎回この密度で回すのは、現実的には厳しい。だからこそ、“初期段階の言語化”を支える仕組みが必要になります。
ここで、「適切とは?」の定義が本人の中で曖昧なままであればAIは「適切な」提案ができません。そこでまず、“適切な目標”を構成する条件を言語化してみます。なお、目標設定のフレームとして有名なSMART原則(Specific / Measurable / Achievable / Relevant / Time-bound)とも、ここで挙げる条件は整合します。下記の整理は、SMARTを「目標文の品質」だけでなく「運用(納得感・整合性)」まで広げたもの、と捉えてください。
· S(具体的):固有性(+上位連鎖で「何に効かせるか」を明確化)
· M(測定可能):計測可能(期限・対象・品質基準もここに含める)
· A(達成可能):挑戦性と実現性(リソース制約を踏まえた「届く背伸び」)
· R(関連性):上位連鎖/チーム内のバランスと整合性(組織・チームにとって意味があるか)
· T(期限):計測可能の中で明示(「いつまでに」を必須化)
一般的なSMART原則の理解では「その目標は楽しいか(ワクワク)」や「成長が見えるか(昨年比)」、さらに「チームとして矛盾していないか(整合性)」などが抜け落ちがちです。だからこそ、これらを最初からチェック項目として入れておくと、目標面談の質が安定します。
① 本人にとって「それ自体がワクワクする」要素がある(やらされ感だけだと続かない)。面談では「終わった後に何が残る?」「どんな成長実感が欲しい?」を言語化する。
② 固有性がある(誰にでも当てはまる一般論ではなく、その人・その職務ならでは)。役割・担当顧客・担当領域の固有名詞が入ると、目標は一気に現実味が増す。
③ 昨年比(現状維持ではなく、成長が見える比較軸がある)。過去実績と比較して「何をどれだけ伸ばすのか」を置くと、挑戦の方向性が明確になる。
④ 挑戦と実現性のバランスがある(背伸びしすぎても、簡単すぎても機能しない)。リソース制約(時間・予算・権限)を踏まえて“努力すれば届く”設定。
⑤ 計測可能である(評価・振り返りができる形になっている)。数値だけでなく、「期限」「対象」「品質基準」を入れると、測れる目標になる。
⑥ 上位目標と連鎖している(会社・部門の方向性とつながる)。本人の目標が、部門KPIや重点施策のどれに貢献するかを1行で説明できる状態が理想。
⑦ チーム内のバランスと整合性がある(偏りや重複がなく、相互に矛盾しない)。個人最適がチーム最適を壊さないよう、役割分担と依存関係を確認する。
この7項目を覚えるのも、全員分チェックするのも大変です。だからこそAIが役に立ちます。
2. AIは「評価者」ではなく「言語化の伴走者」として使う
ここでAIに期待したいのは、目標の良し悪しを“判定”することではありません。本人の頭の中にある曖昧なイメージを、上の条件に照らして「言葉に直す」「不足を補う」「表現を具体化する」といった、言語化プロセスの支援です。うまく設計すれば、AIは上司に代わって一次レビューを担う“有能なコーチ”になります。
おすすめの運用はシンプルです。本人が下書きを作成 → AIが「7条件」で一次レビュー → その結果を持って上司と面談、という三段階にします。上司は“ゼロから添削”ではなく、論点が整理された状態で対話に入れるため、時間当たりの密度が上がります。
注意点が2つあります。第一に、入力する情報は必要最小限にし、法人専用のAIでない限り、個人情報・機密情報は入れない(前号の規程に沿う)こと。第二に、AIの出力はあくまで下書き・壁打ちとして扱い、評価や処遇の判断をAIに委ねないことです。
3. そのまま使える:目標設定プロンプト(例)
例えば部下(または本人)が、下書きの目標をAIにかけるときは、次のように依頼します。
(プロンプト例)
あなたは人事と現場マネジメントの両方に詳しい、目標設定のコーチです。以下の「職務」「現状」「上位目標」「本人がやりたいこと」「下書き目標」を読み、目標が“適切な目標”の条件を満たしているか一次レビューしてください。
判定基準は次の7つです:①ワクワク ②固有性 ③昨年比 ④挑戦と実現性 ⑤計測可能 ⑥上位連鎖 ⑦チーム内整合性。各基準について、(A:十分 / B:要改善 / C:不足)で評価し、理由を1~2行で述べてください。その後、CやBになった項目を改善するために、修正目標を2案提示してください。最後に、上司と合意するための確認質問を3つ作ってください。
<入力>
#本人の職務とチーム構成:
#現状(前年の目標とその達成状況も含む):
#上位目標:
#本人がやりたいこと(または強み):
#下書き目標:
(補足プロンプト例:上位連鎖チェック)
部門の重点施策(最大3つ)と、私の目標案を読み比べ、どの施策にどう貢献しているかを「1行の因果」で説明してください。つながりが弱い場合は、目標案のどこをどう直すと連鎖が強くなるか、修正文を1案提示してください。
(補足プロンプト例:チーム内整合性チェック)上位目標およびチームメンバーの目標一覧(役割と目標を箇条書き)を入力します。重複・抜け・優先順位の衝突があれば指摘し、「役割分担を明確にする修正案」を提案してください。依存関係がある場合は、誰と何を合意すべきかも列挙してください。
4. まとめ:上司の“指導コスト”を下げ、目標の質を底上げする
「適切な目標」を言語化できれば、面談は“ダメ出し”から“対話”に変わります。AIを一次レビュー担当として組み込むことで、上司は細かな文章修正ではなく、優先順位づけや意思決定に時間を使えるようになります。
最後に、まずは小さく始めるための「今週できる3ステップ」を置いておきます。
1. 7条件をチームで共有し、「今期はこの観点で目標を作る」と合意する
2. 上のプロンプトをテンプレ化し、下書き段階でAI一次レビューを必須にする
3. 面談ではAIの出力をたたき台に、「何を捨て、何に集中するか」を対話する
もし「やれそうなことは分かったけど、進め方が難しそうだな」と思われたら、是非マイツにお声がけください。マイツランシ社では、【目標管理における目標設定ワークショップwith生成AI】をご提供しております。
【執筆者紹介】
谷公爾 Tani Koji 札幌生まれ、茨城・兵庫育ち。上海在住、満60歳
2003年から中国ビジネスに関わり、とうとう滞在23年。戦略立案や営業強化、人事組織強化などのコンサルティングを得意としてきましたが、生成AIの登場で従来型のコンサルティングは近い将来、意味を失っていくと痛感。数百に及ぶAIサービスを試しまくり、自社AIも設定し、中国で日系企業がこれをどう使っていくべきかのアドバイザリーを開始しました。
AIを恐れず、信じすぎず、事業成功に向けた良きパートナーとして付き合っていくためのお手伝いができればと思っています。
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